乳がん治療と乳房再建
乳がんとは
日本人の女性にとって乳がんは一番発症率の高いがん疾患(グラフ1)です。現在、16~20人に1人が罹患する病気です。
(クリックで拡大します)
また、20年前と比較して(1985年と2005年との比較)、生活様式の欧米化に伴い増加傾向です(グラフ2、3)。特に、40歳代の若年層の罹患率が倍増しているのが特徴で、60歳代までその増加状況は継続しています。
多くの研究から乳がんのリスクと判定されているのは、早い初経、遅い閉経、出産状況(初産の年齢が高い、出産数が少ない)、閉経後の肥満など、女性ホルモンや家族歴などです。また、アルコール、喫煙などもその原因といわれております。
但し、乳がんは疾患の進行度/病期によりますが、予後の良い疾患でもあります。早期発見の場合は適切な治療を行えば生存率の高い疾患です(グラフ2、4)。そのため、近年乳房再建の希望も多く、乳房再建術は乳がん治療の重要な選択肢となってきてます。
乳がん検診について
乳がんの早期発見のためには、有効な検診を行うことが大切です。厚生労働省は2004年の通達で40歳以上の女性に対してマンモグラフィ検診を行うことを提唱しており、欧米のデータでは明らかにマンモグラフフィ検診を受診することで乳がんの死亡率が減少することを示してます。しかし、欧米諸国の70~80%の受診率に比べて、日本の受診率は20%程度であり、低いといわざるを得ない状況です。定期的に乳がん検診を受診し、早期発見することで、予後も向上することが国内でも期待されております。
2.診断について
診断においては、検診・触診の他に、MRI・CT・乳腺エコー・マンモグラフィなど、各種の画像検査とそれに続く、病理検査(細胞診・針生検・摘出生検・マンモトーム生検)などを実施して、診断します。
3.治療について
患者さんの乳がんの状態に応じて、1)手術療法、2)薬物療法、3)放射線療法を其々組み合わせて行われます。
1)手術療法
乳がんの手術の術式はがんの大きさと拡がりにより、適応が異なります。乳房切除術から乳房温存療法と温存率が高まっています。また、安全な乳房温存療法を行うために、各種の画像診断法を用いて、乳管内進展や微小多発病巣といった乳がんの広がりを各種診断法を駆使して、治療に応用されております。さらに、センチネルリンパ節生検※)の導入によって、腋窩郭清を省略できる患者さんが増えております。
※)センチネルリンパ節はがん細胞が最初に転移するリンパ節と考えられており、このセンチネルリンパ節を検索してがん細胞の有無を検査します。がん細胞が無ければ、その先のリンパ節に転移無していないと考えて、残りのリンパ節切除を省くことができます。
2)薬物療法
抗がん剤である化学療法、ホルモン治療、分子標的治療薬などの各種の薬剤を主体とした全身療法です。個々の患者さんの乳がんの状態に応じて、手術前・手術後の補助療法・全身療法や転移巣に対する治療として行います。
3)放射線治療
放射線治療は初期の乳がん治療では、温存療法の術後に照射することで、再発予防率を減少させることが可能であり、転移再発乳がんの症状緩和などさまざまな病態に応じて実施されております。但し、治療効果と有害事象を判別しながら患者さんの治療に即した方法を選択することが重要です。放射線療法は手術や他の療法(化学療法、ホルモン療法、分子標的治療薬)と適切に組合せる事により、患者さんの長期生存に影響を与えます。
4)乳房再建(温存・全摘)
乳腺内のがん(非浸潤性乳管がん)や再発リスクの少ないと考えられる乳がん患者さんに対して乳房全摘を行う場合、形成外科と連携して乳房再建を行っている施設があります。また、乳房再建の方法は、現在は一期的再建法と二期的再建方法があり、前者は乳房全摘直後に乳房再建を同一手術内で行います。後者は乳房全摘直後に組織拡張器(ティッシュ・エキスパンダー)を挿入し、その後は連携を行っている施設で再建手術を行います。
また、昨今、温存療法に対する再建も積極的に行われてきています(表1)。特に、CAL脂肪幹細胞移植法はがん摘出欠損に応じた部分的な注入が可能であり、がん摘出前の乳房の状態に近づける再建が期待出来ます。
(表1:クリックで拡大します)