人工物を用いた手術

日本においては明確なデータはありませんが、アメリカではアメリカ形成外科学会(American Society of Plastic Surgeons)が詳細なデータを提供しています。これによると、アメリカ国内で2003年に行われた豊胸術は約254,000件であり、そのほとんどは、人工物のインプラント(シリコンバッグ、生理食塩水バッグなど)により行われています。人工物による豊胸術は、バストの大幅なサイズアップが実現できる反面、内容物の漏出や細菌感染、感覚異常など、数々のリスクが明らかになっています。

CAL組織増大術であれば、インプラントの抜去と同時に、ご自身の脂肪+細胞による組織増大を行なうことが可能なケースも多いです。ご遠慮なく当院にお問い合わせ下さい。

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インプラントの種類

生理食塩水バッグ:
滅菌された生理食塩水が外膜に包まれています。
シリコンジェルバッグ:
粘度が低く液体に近いシリコンのジェルが外膜に包まれています。
コヒーシブシリコンジェルバッグ:
外膜が破れても簡単には漏れ出さないよう、粘度の高いシリコンが外膜に包まれています。

CAL組織増大術と、代替可能な治療方法との一般的な比較は、下記の通りです。

治療方法 長所 短所
注入剤
(ヒアルロン酸など)
組織を採取する必要がない。 吸収されて無くなる。効果が低い。
人工物
(プロテーゼ)の挿入
組織を採取する必要がない。
増大する大きさが選択できる(片側200ccを超える大きさも可能)。
感染しやすい。皮膚切開を必要とし、線状瘢痕が残る。異物反応で周りが固くなる。シリコンバッグなどは時間が経つと中身が漏れる傾向がある。
通常の吸引脂肪移植 異物反応が起こらない。脂肪吸引で痩せることができる。「かたまり」で移植するのではない為、形態修正の自由度が高い。 生着率が低い。「かたまり」で移植されると石灰化を起こしたり、感染することがある。
CAL組織増大術 異物反応が起こらない。脂肪吸引で痩せることができる。「かたまり」で移植するのではない為、形態修正の自由度が高い。石灰化や線維化を起こしにくく、安全性が高い。従来の脂肪移植に比べて、生着率が高く、組織増大効果が大きい。 組織を採取する必要がある。1回の手術で、極端に大きな増大は難しい。
真皮脂肪移植 通常の吸引脂肪よりは生着しやすい。 他の部分の組織が無くなる。皮膚切開を必要とし線状瘢痕が残る。形態修正の自由度が低い。
有茎皮弁(筋皮弁・脂肪弁を含む)移植 通常の吸引脂肪よりは大きな組織を移植できる。 他の部分の組織が無くなる。大きな皮膚切開を必要とし、線状瘢痕が残る。移植できる場所が限られる。組織の一部が壊死しやすい。形態修正の自由度が低い。
血管柄付き
遊離組織移植
有茎皮弁(筋皮弁・脂肪弁を含む)に比べ組織を移動させやすい。 他の部分の組織が無くなる。大きな皮膚切開を必要とし、線状瘢痕が残る。吻合血管が詰まると移植組織がすべて壊死する。 組織の一部が壊死しやすい。形態修正の自由度が低い。
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インプラントの抜去

2003年の1年間にアメリカ国内で行われた、インプラントを使用した豊胸術は約254,000件です。一方、同じ年にインプラントを抜去した人の数は約45,000人に上ります※1。これは、インプラントの移植を行っても期待していた結果が得られないことや、将来の健康への不安、インプラントが破れてしまった等の理由で、抜去を望む女性が多いからです。

しかし、インプラントを抜去するとバストが萎縮するため、形状の悪化を招きます※2写真)。そのため、インプラントの危険性を認識していても、再度インプラントを移植せざるを得ないのも事実です。シリコンジェルが体内で破れた場合、シリコンジェルが漏れ出すため、インプラントの周囲にある乳腺を切除しなければならないこともあります※3写真)。

人工インプラントの危険性

人工物であるインプラントは人体に悪影響を与える可能性があると懸念されており、医学、科学の分野で研究が進められています。また、米国のFDA(注1)は数多くの公式な見解を発表し、インプラントの移植を予定している方に対して情報提供を行っています。乳癌の切除等で乳房再建を希望する女性は多く、下記に挙げる高いリスクを持つインプラントを使用した再建術がよく行われています。

以下はシリコンジェルバッグや生理食塩水バッグを使用した豊胸術を行った際に考慮すべきリスクです。

  • 外膜の破れ

    生理食塩水やシリコンジェルを包んでいるインプラントの外膜は、体内で破れる可能性があります。生理食塩水バッグが破れた場合、内容物である生理食塩水は速やかに体内へ吸収されるため、バストが萎縮してしまいます。シリコンジェルバッグが破れた場合も徐々に萎縮します。バッグの外に出たシリコンジェルは体内に浸潤し、その結果、強い痛みや倦怠感など、様々な症状を引き起こすことが報告されています。※4

    FDAは、インプラントを長期間体内に埋没している女性を対象に、MRIを使用して外膜の破れに関して研究を行いました。その結果、8割近くの女性でバッグの破れが確認されましたが、大部分の女性がそれに気付いていないことが明らかになりました。※5

  • カプセル拘縮

    体内に異物が存在すると免疫反応により、硬く編み込まれたようなコラーゲン繊維が異物を取り囲むようにして形成されます。これをカプセルと言い、体内のインプラントを硬く締め付ける拘縮を起こすことがよくあります。カプセル拘縮が起きると、インプラントを移植してあるバストに強い痛みと変形が生じることがあります。治療のためには、インプラントの周囲の拘縮した組織を外科的に摘出するか、インプラントを抜去することになります。しかし、一時的に拘縮した組織を摘出しても、インプラントが体内へ存在する限り、再度カプセル拘縮を起こす可能性はあります。

    カプセル拘縮には以下の4つのグレードがあります。
    • グレード1:バストは柔らかく自然な外見です。
    • グレード2:バストは少し硬いですが見た目は普通です。
    • グレード3:バストが硬くなり、見た目に変化が表れます。
    • グレード4:バストがかなり硬く歪んだ形状になり、強い痛みを伴います。
  • 自己免疫疾患

    関節や全身に強い痛みが生じるなどの症状が出る、自己免疫疾患(注2)とバストに移植されたシリコンバッグの関連性は世界的に研究されています。※6。シリコンバッグを移植して7年以上過ごした女性は、繊維筋痛症(全身に強い痛みが生じる病気)や自己免疫疾患を引き起こしやすいという報告もあります。※7

    リューマチの症状を訴える、シリコンバッグを移植した96人の女性を対象とした興味深い研究があります。97 %の女性(43人のうち42人)はバッグの抜去により症状が緩和されましたが、逆にバッグを移植したままであった96 %(52人のうち50人)の女性はリューマチの症状が悪化しました。※8

  • 細菌感染

    インプラントを移植した女性のうち、約2 %の確率で細菌やカビによる感染を起こすことがわかっています。※9
    感染は手術中の処置が原因で起きることが多く、一般的に手術後数日から数週間後に感染がわかります。抗生物質を投与しても感染が収まらない場合は、インプラントを抜去する必要があります。
     また、術後年月がたってから感染の兆候が明らかになることがあります。一般に、どの患者も若い頃は健康であっても、年齢を重ねると糖尿病を発症するリスクが高くなります。糖尿病の患者は細菌感染に対して抗生物質などでは十分治療できないことがあります。その場合、速やかにインプラントを抜去しない限り命に関わることすらあります。

    コヒーシブでないシリコンジェルがバッグ外に漏出した場合は、周囲にしみ出し、皮膚を突き破って体外に出てくることがあります。体外に通じた傷口から細菌が侵入し、バッグ内まで感染が発生することもあります。治療にはバッグを抜去するだけでなく、シリコンがしみ出した部位も皮膚を含めて切除する必要があります。目立つ場所に大きな傷ができてしまうことがあります。

    どの種のインプラントであっても、インプラント挿入は感染へのリスクを負った治療です。

  • 痛み

    大胸筋下への移植は手術後に強い痛みを伴うことがありますが、乳腺下への移植の場合は比較的弱いといわれています。カプセル拘縮などにより常に痛みを生じることもあります。

  • シリコンバッグから溶け出す白金

    シリコンバッグに含まれている白金は体内で溶出し、血管やリンパ腺を経由して骨組織に蓄積することが明らかになりました。バッグの抜去を行っても、長期間に渡り骨組織中に存続していることも報告されています。

    また、シリコンバッグを移植している女性の母乳中の白金濃度は、移植の経験がない女性の母乳と比較すると約100倍高濃度であり、尿中においては1,700倍であるというデータもあります。※10

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コヒーシブシリコンバッグの安全性

コヒーシブシリコンジェルバッグは通常のシリコンジェル入りのバッグに比べ粘度が高く、バッグが破れても漏出し難い構造になっています。しかし、最近開発されたインプラントであるため、長期間に渡り使用した場合の危険性はわかっていません。

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生理食塩水バッグの移植後に起きる症状※10

※9

FDAの調べでは、手術後3年で21 %の女性にバストのシワやヨレが起き、13 %の女性が再手術を受けていることが明らかになりました。

重複回答あり
症状 手術後 3年で起きている比率
バストのシワ・ヨレ 21 %
再手術 13 %
乳頭の感覚低下 10 %
カプセル拘縮 9 %
インプラントの抜去 8 %
左右のバストの形状異常 7 %
乳頭の感覚過敏化 5 %
移植部位の痛み 5 %
生理食塩水の漏出 3 %
触るとバッグが感知できる 2 %
細菌感染 2 %
下垂 2 %
瘢痕 2 %
血腫 2 %

手術後5年と、7年経過した患者の追跡調査の結果では、5年以内に20 %、7年以内に25 %の人が再手術を受けていると報告されています。さらに、インプラントの抜去を行った女性は術後5年以内で14 %、7年以内で19 %に上っています。

重複回答あり
移植と共に起きる合併症 5年以内 7年以内
N=1264 N=1264
再手術 20 % 25 %
インプラントの抜去 14 % 19 %
カプセル拘縮(グレード3、4又は不明) 10 % 11 %
インプラントの萎縮 10 % 16 %
バストの痛み 7 % 12 %

再手術を受ける理由を調べると、インプラントのサイズ・形状の変更が一番多く、他にはカプセル拘縮やバッグの破れが続いています。インプラントの移植から時間が経過するほど、バッグの破れが起こりやすくなり、術後7年以内には28 %の女性がこれを理由に再手術を行っています。

重複回答あり
再手術の理由 3年以内 5年以内 7年以内
N=255 N=343 N=464
患者がインプラントのサイズや形状変更を希望したため 33 % 29 % 24 %
カプセル拘縮 19 % 17 % 15 %
バッグの破れ 14 % 19 % 28 %
バストのシワ、ヨレ 12 % 11 % 10 %
バストが左右非対称になったため 10 % 8 % 6 %
下垂 9 % 9 % 9 %
肥大性瘢痕 9 % 6 % 5 %
血腫 6 % 4 % 3 %
感染 5 % 5 % 3 %
バストの痛み 1 % 1 % 1 %

CAL組織増大術であれば、インプラントの抜去と同時に、ご自身の脂肪+細胞による組織増大を行なうことが可能なケースも多いです。ご遠慮なく当院にお問い合わせ下さい。

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脚注

1. FDA(Food and Drug Administration:食品医薬品局)は、食品・医薬品・医療機器・化粧品などの製造や販売の許可や取締りを行うアメリカの行政機関です。日本の厚生労働省にあたるHHS(Health and Human Services:保健福祉省)に属する一機関になります。
2. 人体には、自己(自分自身の身体)と非自己(体内に侵入してきた異物)を区別し、細菌やウイルスなどの非自己の物質を排除する免疫システムがあります。このシステムに異常が起きると、自己の物質までもが排除の対象となってしまい、免疫細胞が自分自身の身体を攻撃してしまいます。これを自己免疫疾患と言い、炎症や疲労、貧血などの様々な症状が現れます。
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参考文献

1. 2000/2002/2003/2004 National Plastic Surgery Statistics. American Society of Plastic Surgeons (ASPS), 2005.
2. Photographs and/or Illustrations of Breast Implant Complications.
3. Statement of Diana Zuckerman, Ph.D., President. National Center for Policy Research for Women & Families. October 15, 2003
4. Vermeulen RC, Scholte HR (2003). "Rupture of silicone gel breast implants and symptoms of pain and fatigue". J Rheumatol 30 (10): 2263-7.
5. Brown SL, Middleton MS, Berg WA, Soo MS, Pennello G (2000). "Prevalence of rupture of silicone gel breast implants revealed on MR imaging in a population of women in Birmingham, Alabama". AJR Am J Roentgenol 175 (4): 1057-64.
6. "Silicone Breast Implants in Relation to Connective Tissue Diseases and Immunologic Dysfunction" Summary of Report of National Science Panel.
7. Brown SL, Pennello G, Berg WA, et al. Silicone Gel Breast Implant Rupture, Extracapsular Silicone, and Health Status in a Population of Women. J Rheumatology. 2001; 28:996-1003.
8. Aziz NM, Vasey FB, Leaverton PE, et al. Comparison of clinical status among women retaining or removing gel breast implants. Presented at the American College of Epidemiology, 1998.
9. Saline-Filled Breast Implant Surgery : Making an Informed Decision Updated January 2004
10. Lykissa E.D. and Maharaj S.V.M. (April 2006). "Total Platinum Concentration and Platinum Oxidation States in Body Fluids, Tissue, and Explants from Women Exposed to Silicone and Saline Breast Implants by IC-ICPMS". Anal. Chem.
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